teleleの雑記帳

たまに哲学の話をします。

分岐時間論理とタイムトラベルの妄想

西條 玲奈 / SAIJO Reina on Twitter: "可能世界は様相論理の意味論に使われるだけだから、タイムトラベルの議論とは直接関係ないんじゃないかとは思うけどねえ。"


 うーん。まあ、直接的と言いますかね。以前、未来へのタイムトラベルは、(未来向き)分岐時間論理で、たとえばある時点で分岐した複数の時間枝の合流として考えられないか、と思ったことがある。分岐した到達可能性(時間論理では、時間的前後関係)が、どこかで合流するようなフレームを保証する公理図式を見つけ出すのは、そんな難しくないはず。というか、S4.2はそうだっけか。*1 あと過去へのタイムトラベルは、前の時点への回帰として。

 たしかGoldblatt(有名な論文を読んでないのだが)の時間論理だと特殊相対性は、S4.2になっていたよな。*2 ある場所で時計を合わせた二つの宇宙船が、別々の速度で地球から旅立つのを考えると、時間枝が半順序になったり、どこかで合流したりする分岐時間論理にリアリティが出てくる。つまり、たんに人の知識状態や信念状態が不完全なので、それと両立可能な未来の状態の予想がシナリオとして複数分岐するという認識的なものでもなく、あるいはそれぞれの時点に対する人の知識がその時点で完全だとしても、そこで知られていることは未来の状態を必然化しないので(必然化するように見える法則も、たまたまこれまで成り立っていただけで、これからもそうとは限らないので)、それと両立可能な未来の状態が複数分岐するという形而上学的非決定論(非宿命論)でもなく、さらには義務論理&行為論理みたいにエージェントの行為選択の結果として歴史が分岐するのでもなく、もっと実在的な分岐時間を考えよう、と。*3

 ただこの場合、可能世界のプリミティブなアプローチとそうでないアプローチと同様、その時点で起こっている出来事や、その前後の出来事とは独立に、あくまでその時点はその時点であると呼べるかどうか、ということを多分ちゃんと考えなきゃいけないような気がする。そしてたとえば、様相における現実主義者と同様に、ここで現在主義者とは、他の時点はプリミティブではないが、<今>はプリミティブであると主張するもの、と考えられないか等々。*4 さらに四次元主義的には、これって異なる時点の、したがって異なる時間的部分が、どこか同じ時点で出会うような場合も考えられるか?とかね。


いや、あんまよく分かってないで書いてます。*5

Omake

 さらに時点とその時点で起こっている出来事を区別するとなると、ニーチェ永劫回帰は、時間は過去向きにも未来向きにも分岐せずに、ひたすらリニアなのだが、ただひたすら同じ命題の並びの繰り返しになっている歴史と、時点の並びそのものが円環している円環歴史に分けられるな、と妄想したこともある。*6


あくまで妄想です。


追記:具体的にどういう公理系だったっけか調べたいのだがこいつ↓が部屋のどこかにあるはず!!

A Future for Presentism

A Future for Presentism

っていうか二か月前まで(最初のほうを)読んでたはず!!
 ググってみたら「相対的な時空のための様相論理」とか、関連したものがたくさん見つかる。PriorやGoldblattの体系をもっと形式的にゴリゴリ検討、発展させてる研究があるのな。あとで勉強汁!!


追記の追記:これ↓は分岐時間で考えてみたいな。

出来事の本質は過去に延びる - うつし世はゆめ / 夜のゆめもゆめ

*1:たしか、Huges/Creswell(1996)にconvergenceの公理図式があったはずだけど。といっても、分岐した時点の連なりの合流を公理図式で保証してやる必要はないか。分岐したら合流しないという公理図式(があったとして、それ)を入れないことで、たんに合流が許容されれば、それでいいのかもしれない。そもそも分岐時間も、分岐するという公理を入れるのではなく、分岐しないという公理を入れないことで、たんに分岐が許容されればそれでいいのだし。

*2:S4だとTもDも入るので、ということはつまりS4.2もそうなのだけど、何でTが必要なのかな。レモンコードでいえば、KD4かK4でもいいんじゃねぇの?という気がした。convergenceの公理図式を入れるなら、K4.2だろうか。K4.3だとリニアになったと思う。たぶん、■φ≡Gφ∧φ∧Hφと定義して、この■がS4.2になるということかもしれない。(ググってみたらたしかにそんな感じ。)

*3:とはいえ、これでも表現できるのは、二つの出来事の間に、時間的距離(と向き?)が異なる複数の経路があるという意味で、青山拓夫さんの言う俗っぽいほうのいわゆる「タイムトラベル」で、たとえば青山さん言うの「テンストラベル」ではない。そもそも後者は相対論以前の世界像でなければ理解不能ではないか、という点もあるのだけど。

*4:永井流ライプニッツ原理の時間バージョンですな。

*5:佐金武さんなどは見当ついていると思うんだよなぁ。

*6:あとで気づいたが、これはその世界で成立している事柄とは独立に、その世界があくまで同じ世界であると考えていいなら、たとえば反射フレームではないのにKTがつねに妥当になるモデルとか、同値フレームではないのにS5がつねに妥当になるモデルがあるといったことと多分同じだね。